自律神経失調症と漢方
自律神経失調症になりやすい人は、体のほうは問題がなく、精神的な部分が原因であることが多いのです。 緊張しやすい、ストレスに弱い、神経質などが原因で自律神経のバランスを崩しやすい傾向があります。
このような人は、体質そのものを改善する必要がでてきます。そういった場合に活躍するのが「漢方」。 ここでは、漢方について少し詳しくお話します。漢方には人間がもともと持っている自然治癒力を利用して、心身の調和を図る作用があるのです。
◎漢方の特徴
- いくつもの生薬が組み合わさってできているのが漢方です。そのために1つの薬で複数の症状をとることができます。
- 病気が続くと抵抗力も落ちますので、他の病気にかかったり病気が悪化することもありますが、漢方薬は体の抵抗力をつけながら病気に打ち勝つ体を作ることができます。
- 漢方薬は個々の体質や症状に応じて処方されます。ですから、2人の人が同じ症状や・病気で受診しても、まったく同じくすりが処方されるとは限らないというわけです。
- 西洋薬とは違い、自然の生薬をもとにして処方されます。ですから副作用も少なく優しいイメージを持ち合わせています。
漢方の考え方
漢方医学独自の考え方の1つに「気・血・水」というものがあります。「き・けつ・すい」と読み以下のような意味があります。
- 「気」・・・・・目には見えない生命エネルギーのこと。
「元気」の気、「気力」の気、「気合い」の気で、「自律神経」のはたらきに近いと考えられています。
「血」・・・・・全身をめぐってさまざまな組織に栄養を与えます。
主に血液を指します。
「水」・・・・・血液以外の体液全般に相当します。
水分代謝や免疫システムなどに係わっているものとされています。
漢方では、この3つの要素が体内を循環することによって人間の体が維持されると考えます。 ですから、1つでも不足したり偏ったりしたときに体に不調があらわれるという考えなので、この3つの要素のバランスがうまく保たれるように漢方を処方します。
では自律神経失調症において、漢方医学ではどのように診察するのでしょうか?
自律神経失調症は先ほどお話した3つの要素のうち「気」「血」に問題が生じて起きると考えています。(下気参照)
- 「気」の問題
- 気虚・・・・気が全体的に不足している状態
- 気うつ・・・気の流れが傷害された状態
- 「血」の問題
- お血・・・・血行不良
- 血虚・・・・血液が全体に不足している状態
そのため人間の体質や症状を考えながら、「気」や「血」の状態を整える漢方を使って症状を取り除いていきます。
自律神経失調症の漢方薬
- 柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
動悸・精神不安・不眠・イライラするなどの症状に使われます。
大承気湯(だいじょうきとう)
便秘・神経症などの症状に使われます。
女神散(にょしんさん)
のぼせ・めまいなどの症状に使われます。また月経不順や更年期障害にも適しています。
香蘇散(こうそさん)
頭痛・神経衰弱・更年期障害や胃腸が弱い、神経質などの症状に使われます。
加味帰脾湯(かみきひとう)
精神不安、神経症も不眠症など使われ、胃腸が弱く、疲れやすいストレスを抱えやすい人のいらいら、のぼせを取り除く効果があります。
柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)
倦怠感・疲労感がある、動悸、息切れ、不眠、微熱などの症状に使われます。
自律神経失調症の症状は個人差が非常に大きく、さまざまな変化を見せることが多いのです。 しかも、体の臓器のどこが悪いといった具体的な原因となる器質的な病気ではないので、なかなか思うような効果が現れないこともあります。 漢方薬は、全身を観察してそれぞれの症状に合わせて処方を決めます。
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